なぜそう思うのか分かりませんが。

なぜそう思うのか分かりませんが。
こんばんは。


長らくBLOGの期間が空いてしまいました。


先日の雷雨が嘘のような。


本日の快晴に心躍らせながら。


サムネ画像でお気づきの様に
本日はNobuyuki Matsuiのコートをご紹介致します。
Nobuyuki Matsuiのコート

まず目を惹くのはこの美しいファブリックではないでしょうか。
蔦(ツタ)をイメージしたドビー生地。
一般的にドビー織というときめ細やかで繊細な柄を表現するのに適していますが


多色使いにダメージ加工。
均一なデザインに適してた、ドビー織とは思えない仕上がり。
Nobuyuki Matsuiのコート

深い緑に色のコントラストが加わることで
奥行きの深さに侘び寂びを感じることが出来ます。
Nobuyuki Matsuiのコート

続いてはディテール。
襟はデタッチャブルになっており
外した襟にもかえしが良くなるように細かなステッチが施されています。

Nobuyuki Matsuiのコート
このコートにはこういった職人の丁寧な仕事ぶりが随所にうかがえます。

Nobuyuki Matsuiのコート
Nobuyuki Matsuiのコート

例えば、立体的に見える袖や、バックヨークには切り替えが幾重にも入っており。
ウエストをシェイプさせる、美しいダーツの取り方。
ただ男らしく見せるのではなく、格式高く、クラシックなショルダーライン。


見れば、見るほどに面白く。
袖を通せば、通すほどに愛着が沸くのです。

Nobuyuki Matsuiのコート

Nobuyuki Matsuiのコート

Nobuyuki Matsuiのコート

このスタイリングは個人的にとても気に入っているスタイリングです。
既に襟が外され
同生地のベストを胸元から覗かせています。
 
これにより胸元が立体的に見えますし
かといって誇張されすぎず、
ベストによりコートのデザインが最大限いかされていると思うからです。

Nobuyuki Matsuiのコート

さて、久しぶりに袖を通してみて。
やはり良い服だなと改めて感じ、筆をとった次第ではございますが。


良い洋服はただ、掛かっているだけでも
僕たちに何か語りかけてくれる。
そんな不思議な力を持っています。


良い洋服は袖を通すと、鏡に映らなくても
素晴らしい洋服だということが肌に伝わります。


良い洋服は自分以外の他の誰かが着ていても
圧倒的な存在感で、その人が持っている魅力を最大限に引き上げてくれるものなのです。


では、なぜこういった洋服を面白いと思うのか。


久しく見なかったからなのか。


久しく袖を通して来なかったからなのか。
  
 
 


実際に目の当たりにし、生地に触れ、袖を通した時にわかる。
自分で着てわかる。誰かが着ていてもわかる。



その不思議な感覚。
ものの持つ魔力。



光り輝く、炎に飛び込む虫ケラの。
有毒な鉱山で宝石を採掘する鉱夫の。
アートに魅せられ、人生を狂わされた賢人たちの。
 
  
 
種族や人種を超越して存在する
本能に訴えかける不思議な力。
 
 
 
その力が
自己表現とか、個性がとか、着飾るとか。


そういうのは全部、置いておかせ。


洋服としての完成度の高さを、改めて感じさせ、
この洋服は人が着るために存在しているという洋服の本質。圧倒的な事実を突きつける。
 
 
 

そしてそれが僕にとっては。
この一着との出会いが誰かにとって。 
かけがえのないものになってくれるであろうという。
 

ある種、確信めいた期待と高揚と。
この散文で伝えることが出来るものかという。
ある種の不安をも抱えながらも。
 
 
圧倒的な本物感を是非、体験してみてもらいたいと。
 
つくづく思うのでした。